矯正歯科のこれからの変化
ホメオスターシスが勝てば正常な状態に戻りますが、ストレスが勝ってしまうと、それに由来する病気になってしまいます。
ストレスの発散方法には、スポーツや趣味などの息抜きが一般的ですが、その他の方法として、無意識下での歯ぎしりや歯の食いしばりが注目されてきています。
睡眠中の歯ぎしりは、意識下でスポーツや趣味などで解消されなかったストレスを、人間のホメオスターシスによって解消させ、正常な状態に戻そうとしているのです。
ストレスの恐ろしいところは、1日中毒ヘビと同じ部屋に入れられた結果、1日で白髪になってしまったとか、極度のストレスで激太りしたとか、全身にジンマシンができたとか、顔面マヒが起こったというような、正常な状態では思いもかけないような結果が生じてしまうことです。
ところがそれらの症状も、ストレスが消えてしまうとウソのように治ったりするのです。
ストレスで問題になるのは、ストレスが大きすぎてホメオスターシスが負けてしまうことと、ストレス自体は小さくても、長時間持続して体調が弱まると、ホメオスターシスの作用も弱まってストレスが勝ってしまうことです。
噛み合わせが悪いことが原因で生じるのは後者の持続型のタイプですが、最近では、子どもでも体調不良が生じる前者のタイプの人も多く見受けられます。
歯ぎしりをしたり、歯に無理な力をかけているのを診断するには、歯茎が後退していたり、歯の根の付近がすり減ったようになっているかどうかで容易に区別がつきます。
こういった状態の人を見ると、かつて歯科医や歯科衛生士が「歯ブラシを強く当てすぎて、歯がすり減っていますね」と注意をしていましたが、現在では歯ブラシですり減っているわけではないことがわかってきました。
噛み合わせの悪い人は歯ぎしりなどによって、一部の歯に過剰な負担をかけているために、歯が欠けて根の部分が出てきてしまっているのです。
その証拠に、欠けた部分に詰め物をしても、数カ月から数年で以前と同じ歯がすり減るのがわかっています。
根本原因である過剰な力の負担を取り除いていないからです。
噛み合わせのことがよくわかっていない歯科医院では、いまだに歯ブラシを強く当てないように注意することがあるでしょうが、その原因はブラシ圧ではないのですから、噛み合わせのチェックを受けることをおすすめします。
歯ぎしりによって歯がすり減ることはすでに述べましたが、歯のすり減り方には正常な範囲内のものと、異常なものとに区別できます。
6歳ぐらいで最初に生えてくる奥歯(6歳奥歯第一大臼歯)は、乳歯から永久歯への交換時期に生えてきて、歯が完成していないのに噛む力を一番受けるので、成人になった時点で一番減っているのは、しかたのないことです。
ですから正常な範囲と考えていいでしょう。
一方、最後に生えてくるはずの一番奥の歯(親不知の手前の歯)が最もすり減っているのは普通ではありません。
正常な力関係で噛み合わせが行われていないと考えられます。
前歯に関しても、歯ぎしりが原因と思われるすり減り方は前歯の先端がギザギザになっており、ギザギザの歯が多いほど広範囲に異常なすり減り方をしていると考えられます。
このように歯が異常なすり減り方をしている人は、体のストレスに耐えられなくなって、歯が悲鳴を上げている状態なのです。
こうして体は特定の歯を邪魔者とみなして排除しようとして歯をすり減らしていきますが、加齢によって歯周組織が弱くなっている人の場合は、歯がすり減る代わりにグラついて、歯を排除しようとする力が働きます。
このようなことから、正しい噛み合わせの人が歯ぎしりをしても、歯はほとんどすり減らないのに、噛み合わせの悪い人が歯ぎしりをすると、急速に歯がすり減ったりグラついたりするのです。
「噛み合わせが歯や体に重大な影響を及ぼす」と言っても、なかなか納得できない人も多いと思います。
噛み合わせのズレによって生じる病気は、たしかにひと昔前までは考えられない疾病であり、現在のように多くの人が困っていたわけではありません。
むしろ文明の進歩によって生じた現代病というべきものです。
そして新しい病気ゆえに、確実に治療を行うことができる歯科医師が極めて少ないのが現状です。
噛み合わせの考え方は、さまざまな理論が現れては消えていって、いまだに統一された絶対的な理論が確立されていないことから、治療経験によって差が出た、たまたま師事した先生や理論に恵まれた一部の先生だけが、治すことができるということが起きてしまうのです。
現段階では、すべての不快症状が噛み合わせと関係していると断定するのは時期尚早の感もしますし、広めることによって患者さんに混乱と医療不信を招く原因になってしまう可能性もあります。
噛み合わせと体の不快症状は深い関係があることはまず間違いありませんが、いま少し科学的に確立された理論が必要だと思います。
いずれにせよ、私は毎日噛み合わせの治療に携わっている歯科医として、噛み合わせと全身の関係がなかなか一般化していかないことをもどかしく思うとともに、不正な噛み合わせに起因する体調不良を訴える人が、少しでも減少していくことを願って止みません。
ひとくちに噛み合わせが悪いといっても、いくつものパターンがありますので、ここでは次の3種類を説明しましょう。
まず、頻度的に一番多い悪い噛み合わせは、下の顎が後方へ押しやられて下の前歯が隠れている噛み合わせです。
下の前歯の隠れる量が多ければ多いほど、下顎は後ろへ後ろへと押しやられてしまうので、耳鳴りがしたり、筋肉に負担がかかって、肩こりや首の痛み、偏頭痛といった不快症状が出やすくなってきます。
口を開けると「カクッ」という音がしやすいのも、この噛み合わせの人に多く見受けられます。
上と下の歯だけ見ると何の問題もなく、まわりの人からいい歯並びだと言われている人も、実際には噛み合わせに問題があるのがこのタイプです。
次に、来院される患者さんの中で重い症状を訴えられる方が多いのが、上の前から2番目の歯が下の前歯よりも内側に入って交差しているタイプです。
2番目の歯が引っ込んでいるために、3番目の犬歯が目立って八重歯のように見える人です。
めまいがする、偏頭痛が激しい、まっすぐ歩けない、吐き気がするといったひどい症状を訴える方に、なぜかこのタイプが多く見受けられます。
このタイプの歯並びの人は、八重歯が気になって審美的にきれいにするために歯を抜いたり削ったりして、その治療のあとに体調が悪くなり、歯科医との間でトラブルになることが多いようです。
つまり、噛み合わせを無視して審美治療の面だけでアプローチをすると、あとで大変なことになる危険性があるということです。
もちろん、このタイプ以外の噛み合わせでも、不快症状のひどい人はたくさんいらっしゃいますが、割合からいうと、このタイプの人に重症の人が多いのです。
最後に、治療する側から最も治療の難しい噛み合わせは、顎が大きくて左右どちらかにズレテいる噛み合わせです。
顔が左右のどちらかに大きくゆがんで見える人の噛みあわせで、左右に大きく偏った位置で長年噛んでいたことが原因です。
レントゲンで見ても左右の骨の太さが大きく違い、体調の不調も右側か左側の片方がひどいという状態です。
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